【研究紹介】どんな道具でも使いこなせるのはなぜか?「道具の身体化」を筋電図で客観的に測定する!

このコラムでは、研究室でいま行われている、過去行っていた様々な研究について、
学生によるインタビュー形式でご紹介しています!

今回の回答者

修士2年生の石郷岡さんに聞きました!

研究の背景は?

指先ではないのにハサミで細かく物を刻め、箸で挟むと食べ物を口に入れずとも食感の予想がつく。他にも私たちはペン、カッター、歯ブラシなど、身の回りにある道具は何でも、目的に応じて様々に使いこなすことができます。

でもなぜ自らの手足ではないのに自在に扱えるのか、言語化できないけれども無意識に使えてしまう。これって結構不思議だと思いませんか?

研究内容について

ヒトが持つ「道具の身体化」能力を筋電図によって観察する手法を提案した研究です。

何の役に立つ?

筋電図による道具の人間工学的研究は従来、筋活動の大小や周波数成分の徐波化で負担や疲労を論じるものが多く行われてきました。しかし現在日常生活で使う道具は低頻度・小負担のものが多く、単純に数値の大小によって良し悪しを評価することは難しいといえるでしょう。

そこでヒトが道具を使う中で直感的に感じる、使いやすさの判断基準はどこにあるのか?そのヒントはもしかすると、この道具の身体化能力の発揮のしやすさにあるのかもしれないと考えています。

この研究の特徴は?

道具の使用中に外乱刺激を与えた時の反応を測定するというやり方で、これまで主観的測定によって行われていた研究分野に新たな方法を提案した点です。

大変なことは?

筆記具の使用を模した実験装置の開発と製作です。一から計画を立て進めていくのはとても険しい道ですが、その分達成感もひとしおです。

図は製作した実験装置

今後の見通しは?

本研究で道具の身体化に重要な要因が何か明らかになれば、新しい道具の開発のきっかけへつながると期待しています。

研究室のここが楽しい!

環境について:

人も場所もとても居心地がよい研究室で、研究にのめり込むことはもちろん、遊びにだって自由に打ち込める環境です。好きなことを研究に生かしている人が多く、自分も趣味の3Dプリントを存分に生かしています。

人工について:

デザインはアウトプットにばかり注目されがちですが、よいものを作るためにはやはりインプットは欠かせませんし、先人の知恵や比較できるデータを使って考察を深めていく科学のやり方はデザインとの相性が抜群だと思います。この研究室の特徴として自身の疑問を解き明かすための基礎研究から、新製品を企業と共同開発するための応用研究まで、幅広い研究が隣り合わせで日々行われている点がとてもおもしろいですね。

石郷岡さんありがとうございました!