(日本語) 医療の現場を支えるプロダクトデザインとは?〜人間工学的視点で紹介〜

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このコラムでは、研究室でいま行われている、過去行っていた様々な研究について、
学生によるインタビュー形式でご紹介しています!

今回の回答者

修士2年生の関屋さんに聞きました!

研究の背景は?

千葉大にはリンパ浮腫研究会という集まりがあって、私はそこに参加していました。ある時、千葉大附属病院の先生方からリンパ浮腫という病気の計測について話を持ちかけていただいたことがきっかけでした。

リンパ浮腫は腕や足が腫れてしまうため、普通は巻尺のメジャーテープで大きさを計測するのですが、人間なのでその値が少しづつずれてしまいます。正確に測れないことは看護師さんの負担になりますし、何より治療を頑張っている患者さんのためにならないため、何か新しい製品でそれを解決したいと考えました。

研究内容について

そこで、メジャーにくっつける小さな製品をデザインしました。メジャーを締め上げる時にテープをキュッと引っぱると思うんですが、その引っぱりの力を統一することができます。引っぱりの力のような「測り方」は誤差の要因として大きな割合を占めるので、これを統一できることはリンパ浮腫計測において重要だと思いました。また、サイズも小さいためメジャーに付けたまま持ち歩くこともできます。コストの面でも今持っているメジャーの先端にくっつけるだけなので、安くてすぐに使い始めることができると思います。

この研究の特徴は?

デザインをする時に、通常のデザインの手法だけでなく人間工学的手法も取り入れていることです。具体的には、人間の身体の使い方からその製品の問題点を見つけ出し、それを数値や生理学的な考え方から解決することです。

例えば、統一する力はどうやって決めるか考えた時に、看護師さんの引っぱる力をセンサーで測定して決めました。通常のデザインの手法ではアンケートを取って、このくらいの力でやってますという風に行うと思うのですが、メジャーを扱う力を数字で言える看護師さんは少ないと思います。そういう時にセンサーを用いて看護師さんも気づいていない潜在的な情報をすくい上げることで、数値でデザインをサポートすることができます。

また、生理学的な考え方で例を挙げると、部位によって皮膚の摩擦が変わることが知られているので、それは引っぱる力に影響するのかといったことも意識しました。人間の仕組みについての知識を持っていることも人間工学ならではと思います。

もちろん通常のデザインの手法も取り入れ、時間をかけて製作に取り組みました。試作を作ったのちに、そこで課題が見つかったらまた試作を作り直して実験を行って数値を解析して…というのを繰り返しました。

この研究の将来性は?

将来性というとちょっと違うかもしれませんが、医療機器などの製品と人間工学の考え方は今後ますます重要になると思います。医療の現場では負担の大きい製品がまだまだ多いのですが、生体が対象になることと専門性が高いため、その解決にデザインの視点が入りにくいのかなと考えています。人間工学の強みは、工学や生理学などの理系寄りの引き出しから最も良いデザインを提案できることです。人間工学の知識は根拠と自信を(使う人にも作り手にも)与えるため、多くの人の役に立つものづくりをすることができると思います。

研究室のここが楽しい!

千葉大学総合工学科デザインコースを目指す方へ

大学では高校までに求められるものとは少し違った能力を求められます。特に、デザインは総合力の勝負なので勉強以外に興味のあることの方が重要だったりします。興味のあることを伸ばせるのがうちの研究室の良いところなので、医療機器のデザインに興味がある方もそうでない方もぜひ来てください。

関屋さんありがとうございました!